NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」完走しました

毎年楽しみにしているNHK大河ドラマ。
今年の主役は(不勉強で申し訳ないのですが)それまで知らなかった井伊直虎という人物。
予想に反して結構楽しめたドラマでした。





初めは期待していなかった

こちらのエントリー の最後に書いているのですが、最初は全く期待してなかったんです、今回の大河ドラマ。
女性主人公で、なおかつ歴史上の大きな出来事に全く絡まない主人公。
どうせまた「戦はイヤじゃー」って連呼する平和主義者に仕立て上げるんですよねーとか思ってましたからね。
数年前の某大河ドラマをなんとかギリギリ完走したときは「もう女性大河とか勘弁して下さいよ」と本気で願い、今年の年頭はあの悪夢が蘇り寒気を感じていました。


予想に反して結構面白かった直虎

今回は予備知識が全く無い人物が主人公です。
そういった場合、例年だったら放送開始する前にガリガリに調べ上げるんですが、今回は下調べも余りしなかったため当初の期待値は低かったものの、特に中盤以降、井伊家を守るために直虎と小野政次が交わした関係性や、その集大成ともいえる神回「嫌われ政次の一生」で、この物語の奥ゆかしさにぶっ飛ばされました。
名前こそ直虎と男子ネームですが、可憐な女子が幼馴染で自分に惚れている男子を、お家を守るために(本人同意のもとで)槍でブッ刺す脚本とか、今までの女性大河では見たことのなかった壮絶なお話に、カタルシスを感じるなという方が無理でした(一応数年前の大河「八重の桜」でも主人公が薩長相手に鉄砲ぶっ放してはおりましたが、こんなに直接的に相手をブッ◯ろす描写は見たことがありません)。

戦国時代ど真ん中が舞台ですから、もっと合戦を見たかったというのが本音だったりもしますが、有名な人物の陰に隠れた名も無き領主や農民など、普通の人々の生活にクローズアップしたのも目新しくてとても良かったと感じています。
いつの時代にも僕らのような市井の人々は存在しています。
そんな普通な人々が歴史の渦に巻き込まれていく様を丁寧に描いていたのには好感が持てました。

予備知識が全く無い状態だったからこそ知的好奇心が擽られましたし、うまく言えないんですが、腹にグッと力が入る面白さではなく、しみじみとした面白さのあるドラマで、気が付けばあっという間に終わってしまったというのが、一年見続けた感想です。


やっぱり歴史は面白い

大河ドラマはあくまでもドラマであり、フィクションです。
「史実ガー」
とか史実との違いに目くじら立てるつもりは毛頭無く、ドラマとして歴史を楽しんでいます。
毎回思うのは、生き方とか仕事とか経営とか考え方とか、歴史から学ぶことはとても多いということです。
特にここ最近は、敗者目線の大河ドラマも増えたため、勝者の目線で編纂された教科書的な見方だけはなく、同じ事象でも見方が変わればいろんな解釈があるということを知ることが出来、視点が広がる気がしています。

また、様々な局面に接した際に人はどう行動するのか?というところに注目出来るのも楽しいところです。
僕らの人生にも、人生の岐路というか何かを選択しなきゃならない局面が必ず訪れます。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
まさにこの言葉の通り、歴史上の人物達の考え方を学ぶというのはなかなか勉強になります。
「戦わずして勝つことを考える」
「自分の中に生きる術を持つ」
「根回し・段取りは超大事(むしろ段取り8割)」
今回の大河ドラマで学んだ主人公の考え方は、(言葉にすると陳腐ですが)こんなところでしょうか。


今作のMVP

今作でも魅力的な人物が沢山登場しました。
小野政次、徳川家康、瀬名、南渓和尚に傑山、昊天の龍潭寺トリオ。
ゆきのじにろくざもいいよね。
エキセントリックな織田信長も良かったし、井伊直政も役者さんそのままでスピンオフが見てみたいとも思います。

でも僕の中で絶対に揺らがない今作のMVP、それは今川氏真さんです。
大河ドラマに限らず其処此処の歴史物で氏真さんは完全なモブキャラ扱い。
桶狭間後に衰退・没落し、今川家は断絶したと思っている人も多いでしょう。
でも史実、氏真さんは家康さんの庇護下で、大名では無くなったものの、高家としてしぶとく家名を残し、その血脈は今日でも続いています。
負けたら討ち死が当たり前の時代に、するりするりと生き抜いて、名門であったが故の朝廷や公家とのコネクションを生かし、江戸幕府成立後は朝廷との交渉役として重宝されたようです。
愛妻家で夫婦仲も良好、なかなかにいい男でした。
この辺の桶狭間後の今川家のエピソード、まずお目にかかることは無く、今作でも完全なモブキャラ・ザコキャラ扱いなのかと思ってましたが、まさか最終回まで登場するとは思ってもみなかったので、今川家のイメージがガラッと変わった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

父の後を継いだはいいものの国衆の離反が相次ぎ、事が上手くいかずに没落する様を見事に演じたかと思えば、流行りの言葉で言うところのアーリーリタイアして父である今川義元の仇である信長の前で陽気に蹴鞠してみせたり、本能寺の変に一枚噛んでいるような素振りもみせたりと、かなり氏真さんのイメージがいい意味で変わったと感じました。
最終回に近づいてくると、かつて自身の人質だった家康さんを「徳川殿」とか「殿」とか、なんなのこの家康愛と思わざるを得ない程の愛されキャラと化し、育ちの良さが良い方に描かれた様に思います(実際の氏真さんも江戸幕府創立後の家康さんのところに結構な頻度で遊びに行って、若干ウザがられていた様です)。
特に最終話、手柄を立てた万千代(井伊直政)が酔っ払って家康さんに元服を願い出て、横から氏真さんが「承知した!」と言う場面、元々は氏真さんの下に家康さんも井伊家も集っていたんだよなあ、伸び盛りの井伊家のエースに旧主が元服の許可を出すとか粋だなあとグッときました。

来年は西郷隆盛を主人公とした「西郷どん」が放送されます。
今年の良い余韻を引っ張って来年も楽しみたいですね。

氏真
ある意味勝ち組の氏真さんの生き方羨ましいっす