映画『はなちゃんのみそ汁』を娘と観た意義

ウチの娘は映画好き。
と言っても7歳の娘が好むのは、年相応にアニメ映画がもっぱらで、彼女と映画館に足を運ぶ時は必ずお気に入りのアニメの劇場版でした。
そんな娘が映画館にあるチラシを手に「これ観たい」と興味を持った映画。
娘が初めて興味を持った実写映画のチラシには、母親が娘に料理を教えているのであろう様子が描かれています。
自分専用の包丁で妻の料理を手伝うことが好きな娘らしい興味の持ち方です。
本日全国公開開始というその映画、それは奇しくも親と子のあり方を考えさせられる映画でした。





実話を元にした作品

映画『はなちゃんのみそ汁』公式サイト

恋人との何不自由ない幸せを夢見ていた千恵はある日、乳がんを宣告される。
見えない不安に怯える千恵(広末涼子)に信吾(滝藤賢一)は優しく寄り添いプロポーズをする
こうしてふたりは晴れて夫婦となった。抗がん剤治療の影響で卵巣機能が低下、出産をあきらめていた千恵だが、あるとき妊娠していることが分かる。
産むか産まないか
産むということはがんの再発リスクが高まり、自らの命が危険にさらされるということだった。
周りの支えで命を懸けて産むことを決意し、はなを無事出産。
しかしながら、家族3人、幸せな日々は長くは続かず、千恵を再び病魔が襲い、残り少ない命を覚悟。私がいなくなってもはなが暮らしていけるようにと、千恵は鰹節を削って作るところから始めるみそ汁など、料理や家事の大切さを教えはじめる。彼女たちのおいしくてあったかい、かけがえのない日々が続いていく。


お恥ずかしながら、この話が実話を元にした映画だということをこの度初めて知りました。
今でも亡くなられた御本人様が書いていたブログが、旦那様によって更新され続けている様ですし、2014年には某局24時間テレビでドラマ化されたそうです。

早寝早起き玄米生活 ~がんとムスメと、時々、旦那~ – 楽天ブログ

映画を観るときは前情報を出来るだけ入れないようにしているんですが、今回は前情報入れちゃいましたねえ。
ブログを舐めるように読み倒しました。
うん、こりゃ泣くよねえ。


食べることは生きること

物語はガンに羅漢した主人公の女性とその夫、そして娘はなちゃんを軸に描かれます。
ガンという病気がこの話のキーになりますから、重々しい雰囲気で展開するのかと思いきや、淡々と、そしてコミカルに話は進行していきます。
僕は原作を読んでいませんが、御本人の生前のブログを読むと、ウィットに溢れた方だったというのが容易に伝わりますから、これは実際のご夫妻の人柄を反映させた作りとなっているのでしょう。
コミカルでありながら悲哀も感じ、最期のストーリーではやはり泣かずにはいられませんでした。
個人的には旦那さんを演じた滝藤賢一さん、昔から好きな役者さんでしたが、彼の演技がものすごく良かった。

ネタバレになっていまいますので詳しくは書けませんが、作中には24時間テレビでドラマ化された時に賛否両論あったという、食事療法や民間療法、いわゆる代替療法に関しても描かれていて、代替医療の光の面が強調されてしまっているようにも見えました。
また、母が「自分がいなくなってしまった時に困らないように」と娘と約束したみそ汁作りも、端から見れば子供を自分の手足のように使っていると思われる描写もありました。
ガン患者のストーリーですから、綺麗事だけでは済まされない負の部分もきちんと描かれていたのは非常に良かったと思います。

そして一緒に鑑賞していた娘も、最初から最後まで食い入るように観ていたのが印象的でした。
連れてく時は、2時間強の長丁場を耐えられるのか?と不安に感じていましたが、どうやら杞憂に終わったようです(僕が号泣した時、娘の目にも涙が光っており、ここでちゃんと感動したのか?と嬉しく思いましたが、後で聞いたらあくびしてたとの事で父は閉口しました)。
映画の感想を聞くと、
「お母さんともっともっと料理したい!」
とのことで、我が家でも今後さらに娘の料理が食卓に並ぶ機会が増えそうです。

hanamiso_akari


自分が残せるものはなんだろう?

この映画を観て僕が最初に思ったことは、横で観ている娘や自宅で妻と一緒に遊んでいる息子に自分が残せるものはなんだろう?ということです。
金銭とか住まいとか、そういう下衆なものではなく、精神的な何か。
もちろん金銭や住居は生きていくためには必須です。
この映画も「生きていくために」食育する様が描かれていますから、生きていくためのものを残してやるのが最善なのかもしれません。
でも、この話の御本人は料理という行為に、自分という母親が存在していたということを娘に残していたのかもしれません。
はなちゃん御本人は、現在でも料理を作り続けているとのことですし、料理することで母との思い出や慈愛を感じているのかもしれません。

さて、自分が子供たちに残せるものはなんだろう?
そう簡単に答えは出ませんが、自問しながら子供達と日々を過ごしていきたいものです。