親愛なるスティーブ

衝撃のニュースから間もない昨夜、人気Podcast番組Hi-Speed Appleでスティーブ・ジョブズ追悼番組の収録でメッセージを依頼されました。
寄稿したメッセージをそのままBlogにアップするとともに、Appleにも送信致しました。
この様な機会を頂き、@Hi_takuyaくん , @comac13さん , @kei_senさんのお三方には感謝の意を申し上げます。






親愛なるスティーブ

このような形で貴方へ初めてのメッセージを書く事になろうとは思いもよりませんでした。
お会いした事もないのに、貴方の突然の訃報を聞き、放心し、何も手が付かない状態です。
信じられない。
信じたくない。
でも、気持ちの区切りをつける意味でも、メッセージを記してみようと思い立ち筆を取りました。
長文・乱文失礼します。

貴方の手がけたプロダクトに初めて触れたのは、もう何年前になるでしょう?
それまでパソコンはおろか、デジタルガジェットやIT関係に全く興味の無かった私が、貴方のプロダクトに触れて衝撃が走った事は忘れる事が出来ません。
貴方のかけたマジックにより、たちまち虜になってしまった事が昨日の事の様に思い出されます。
そのマジックは風化される事がなく、貴方と貴方のプロダクトを知れば知る程ますます大きくなり、元来飽きっぽい性格の私ではありますが、今現在でも全く飽きる気配が無いようです。
マジックというよりも、貴方が提示する「革新性」と「普遍性」の成せる妙なのでしょう。

そう、貴方は私達を導くナビゲーターでした。
私達の先頭を行くペースメーカーでした。
私達の度肝を抜くアイデアニストでした。
そして私達の希望でした。

私はMacで音楽を作っています。
私はMacで仕事をしています。
私はMacで家族との思い出を管理しています。
そしてiPodやiPhone、iPadにAppleTV。
日々の生活で、貴方のプロダクト、いや、貴方の作品に触れない日はありません。
3歳になったばかりの私の愛娘でさえ、貴方の作品で遊んでいます。
貴方の作品に接してなかったら、きっと今の私はおろか、家族の生活でさえきっと違ったものであったでしょう。
私達の生活には貴方の思想がしっかりと息づいている様に感じてなりません。

私は美しいモノを見るのが好きな男です。
美しいモノを収集するのが好きな男です。
貴方の手がけたプロダクトは、もはや単なる工業製品の域を遥かに超えています。
その佇まいは凛としており、一言で言うなら「芸術品」。
しかも貴方の思想や哲学が凝縮された至高の逸品。
芸術品を所有する喜びを、貴方は私に与えて下さいました。
芸術品を所有するに相応しいセンスを持とうと意識させて下さいました。

しかし、芸術品は簡単には産まれない。
産みの苦しみというものはどんな天才にもあるものだと思います。
芸術品を産み出すための徹底した姿勢。
妥協しない姿勢。
自分を信じ抜く姿勢。
そして最善の形で昇華させてしまう力。
私も自分の仕事にはまがりなりにも自信はあるのですが、到底貴方の足元にも及びません。

貴方は「こうありたい」と思える、数少ない私のヒーローです。
世界を変えた尊敬すべき革命家です。
貴方の様に、世界を涌かせ、世界を変えるムーブメントを起こす事は出来ないけれど、少しでも貴方に近づける様に、自信を持ち、自分を信じ、常に考え、胸を張って歩きたいと思っています。
貴方の様に凛として生きたいと切に思っています。

最後に、貴方という希代の天才が生きていた時代に生まれ、貴方が巻き起こした革命に興じ、貴方が世界を変えて行く様をリアルタイムで体感出来た事に心から感謝して、このメッセージを結びます。

俺は貴方の思想と共にゆく。
ありがとう、スティーブ。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。