映画「カーズ/クロスロード」が中年になった僕の心にグッときた

子供達には積極的に映画を観せて美的感覚と感性を養おうとしています。
ヒット作のカーズの続編で現在公開中の最新作を息子と一緒に観に行きました。
泣きました。





カーズとは?

カーズ 」は2006年に公開された長編アニメーションの映画作品です。
車を中心とした乗物を擬人化したキャラクターによって物語が構成されており、虫や牛なども車化されています。
主人公のレーシングカー、ライトニング・マックィーンはスーパー・ルーキーとして注目を浴び有頂天になっており、栄光ばかりに目が行っている自信過剰で自分勝手な性格ですが、仲間達との出逢いによりレーサーとしても人(人じゃないけどね)としても成長していく物語で、2011年には続編の「 カーズ2 」が、ピクサー映画としては初の「トイストーリー」シリーズ以外での続編として公開されました。

生まれてこのかた「きかんしゃトーマス」大好きだった息子太郎の興味は最近カーズに移った様で、毎日毎日AppleTVを立ち上げては、飽きもせずに繰り返し視聴しています(おかげさまで今まで購入したトーマスグッズは放置され、親としては白目閉口気味です…)。
普段アニメーション映画はあんまり好みではありませんが、息子が興味を持ったのをきっかけに最近カーズを視聴しはじめました。
これが結構というかかなり面白い。
擬人化されたレーシングカーが主人公の話ですからカーレースの話が主軸なんですが、実はじわりと感動できる人情話に仕上がっています。
ストーリーはよくある王道パターンですが、王道が故の面白さです。
人間でないキャラなのに、信頼・敬意・希望・根性・友情などといった感情がフルに詰まった、つまらない実写映画よりもはるかにエモーショナルで印象深い作品だと思います。
この辺はさすがピクサーの安定感といったところでしょうか。


カーズの最新作

そして本年7月15日には最新作「カーズ/クロスロード(原題 : Cars3)」が公開されました。

天才レーサー “マックィーン” を待ち受けていたのは、新たなハイテク世代の台頭と、レース人生を揺るがす大クラッシュだった。
夢の続きか、それとも新たな道か?
“人生の岐路(クロスロード)” に立つマックィーンの運命の鍵を握るのは、新たな相棒クルーズだった…


どうやら今作はどん底からの復帰を目指すマックィーンが描かれるようで、「老いと時代の変化」「限界とは何か」を訴えるテーマになっているようです。
このあきらかに中年層を狙ってきている今作に 先日40歳 になった、なってしまった僕は強烈な興味を持ちました。

あの自己中心的で自分勝手、自信過剰なマックィーンが老いと時代の変化でどう変化するのか?
同じく自己中心的で自分勝手で自信過剰だけど、確実に老いてきている僕自身にマックィーンが投影されているようです。

そして4歳の太郎はそんな無粋なことはこと御構い無しに、やっぱり今作に興味があるようです。
無理矢理息子の腕を引っ張って、映画館に足を運びました。


中年の心にグサグサ刺さるシリーズ最高傑作

なんだこの映画は。
まるでスポ根映画のシリーズ物を一本に凝縮したような作品じゃないか。
熱い。
熱過ぎる。
目からオイル漏れならぬ涙が止まりませんでした。
他の席に座ってた家族の視線も全く気にせずボロボロ泣いてしまいました。

何を隠そう僕はスポ根映画が大好きです。
いや、正確にいうと主人公が目的に向かって必死に努力する映画が大好物なんです。
それは多分、僕自身が極端なまでの怠け者で「頑張る」ということが苦手だからに他ありません。
自分が努力できないから、他人の努力がものすごく美しい行為に見えるんです。
だから僕はスポ根的な映画で泣くんです。

加齢のため遅くなったマックィーン。
いや、遅くなっている訳ではないんです。
時代の変化なんです。
テクノロジーの集合体のような新人に無残に破れ、リベンジを誓う。
しかしいくらマックィーンと言えども老いとテクノロジーには勝てず、鍛えても鍛えてもタイムは縮まりません。
先述の通り、この映画は中年の危機についての映画です。
この映画でマックイーンが戦っている本当の相手は、次世代機ジャクソン・ストームではなく、自身の老いです。
メインターゲットは子供なのに、ピクサーさんやってくれるじゃないですか。

「これからは昔のようにはいかないぞ。スピードにおいても、あらゆることにおいてもだ。」

「これが最後のチャンスなんだ。負けたらもう2度と戻ってこれないんだよ。」

「失敗を恐れないで。チャンスが訪れないことを恐れてよ、あなたにはまだチャンスがあるじゃない。」

「前のようには戻れない。時計の針は戻らないのだから。」

「限界って誰が決めるんだ?」

「自分の終わりは自分で決める!」

もうこの時点で涙目。
自分自身に言われているようで、こみ上げてくるものがありました。
僕はある意味カーズ前シリーズのマックィーンに自分を重ねて観ていたので、今作のマックィーンに自分を投影させちゃって客観的に観てられません。
最初のカーズは社会人になりたての、まだ若さ故の万能感からの空回りと、横との繋がりやチームワークの大切さを思い出しましたし、カーズ2はある意味ピクサーらしからぬ視点に面食らいましたが、子供を持つ親視点で観ると面白いと視野を広げてもらいました。

そしてクロスロード。
ネタバレになってしまうのであまり深くは書けませんが、今後の人生やキャリアに不安を抱く今の状況をマックィーンが体現しているように感じました。
僕自身の現状としては、正直若い世代の脅威というのは感じていませんし、時代の変化にもついていってると思いますが、加齢による衰えは如実に感じています。
いずれ自分にもマックィーンのような状況が訪れる、いや、訪れかけているのかもしれない。
そんな時僕はどんな選択をするのか?
深く考えさせられましたし、最後のマックィーンの意外な選択にも感じるものがありました。
諦めるのではなく、自分を客観的に見て、出来ることと出来ないこと(出来なくなってしまったこと)をジャッジして、納得した上で次のステージに進む。
これって 前回のブログ記事 に書いたことそのまんまですから余計にグッときたのかもしれません。

僕の中では間違いなくシリーズ最高傑作の今作。
上映期間は9月上旬までとのこと。
もう一回足を運んでしまおうかと真面目に悩んでいるところです。
まだ未聴の中年の皆様、一緒に観に行きませんか?