遊びをせんとや生まれけむ
毎週日曜のお楽しみ、大河ドラマ平清盛が昨日をもって最終回を迎えました。
いやいや本当に面白かった。
自称大河ドラマフリークの私的に、ここ10年の大河ドラマでベスト3に入る作品です。
終わってしまってとても哀しい…
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。
平成に平安を観る
平 清盛(たいら の きよもり)は、平安時代末期の武将・公卿。
伊勢平氏の棟梁・平忠盛の長男として生まれ、平氏棟梁となる。
保元の乱で後白河天皇の信頼を得て、平治の乱で最終的な勝利者となり、武士としては初めて太政大臣に任ぜられる。
娘の徳子を高倉天皇に入内させ「平氏にあらずんば人にあらず」(『平家物語』)と言われる時代を築いた(平氏政権)。
Wikipediaより引用
平清盛が活動したのは平安時代末期。
公家に蔑まれていた武家の地位を向上させ、その後700年以上に渡る武家政権の礎を築いた人物です。
歴史の教科書や平家物語では、どちらかといえば悪役として描かれる事の多かった平清盛と平家一門(源平合戦の勝者が源氏なので仕方が無い面がありますが)。
そのイメージを払拭するべく制作された意欲作と捉えていいと思います。
私の平安時代に対するイメージは、何やら雅な世界というボンヤリとした印象しかなく、この時代の大河ドラマというのは非常に新鮮でした(と言いつつ1993年には「炎立つ」という超名作があったのをエントリーギリギリに思い出しました)。
よく知らない時代の登場人物をWikipediaや関連本などで調べながらその濃密さを紐解いていく作業は、毎年の事ながらとても楽しいモノです。
今年は特にそういう行為が多く、自身の知的好奇心を満たすという意味でも非常に身になる作品でした。
たくさんの登場人物とさまざまな対立軸があって相関関係の把握は通年のそれと比べると非常に難解でしたが、それぞれにおける政治的な駆け引き、権力闘争は平安の世も平成の世も同じなんだなと感じてみたり。
史上最低視聴率ですが
何処ぞの県知事の画面が汚い発言が尾を引いたのか、大河ドラマ平清盛は歴代最低視聴率を記録してしまいました。
(個人的には、この県は清盛と所縁の深い場所だけに、この発言はいわゆる大河に便乗した収益に大きく関わってしまったと思っています。まあ、そういう諸々の事情もありあえて発言したのかもしれませんが)
これは画面が汚いだけでなく、上述の様に”平安”という時代にあまり馴染みが無いという事や、”平”や”源”、”藤原”を名乗る登場人物が沢山おり、なおかつ治天の君である天皇や上皇、法皇と名乗る人物も沢山登場し、各々が複雑に絡み合う物語である事から、”分かりやすい”物語では無かった事が原因の様に思います。
また、皇室の人物を”王家”と呼ばせ、右寄りな方々のお怒りを喰らったなどという事も言われていますし、皇室・朝廷内のドロドロの恋愛描写(近親相姦や男色)も、日曜の家族団欒の時間帯には相応しく無かったとの声があった事も事実です。
全てを擁護する訳ではありませんが、画質に関しては完全に好みの問題だと思います。
坂の上の雲や龍馬伝にも通ずる、プログレッシブカメラを用いたあの画質、個人的には大好きです。
また、物語や登場人物の相関が「分かり辛い」と言うのなら、自分で調べて脳内補完すれば良いだけの話。
確かに”分かりやすい”物語ではありませんでしたが、この程度のあらすじを難しいと言っている様な人の読解力とはry(お角が立つのでやめておきます)。
視聴率は歴代最低でも、数年後には名作として評価されるドラマなのではないかと個人的には感じています。
NHKさんも視聴率などに媚びず、素晴らしい大河ドラマをこれからも量産して欲しいところです。
といろいろ書いてきましたが、本音を申し上げますと、教養も無くて知的向上心すら無いバカはもう大河ドラマ見んなよ(あっ、言っちゃった…)。
源平の比較
歴史というのは残酷なモノです。
勝者が歴史を塗り替えるのは勿論ですが、それが故に敗者の物語を捻じ曲げてしまうという側面もあります。
豊臣を倒して幕府を開いた徳川は、豊臣を辱めましたし、徳川を倒した明治政府は豊臣を奉じ徳川を執拗に辱めました。
源平もまたしかり。
我々が義務教育で学んだ源平物語は、源氏が善で平家は悪という構図だった様に思います。
『平家物語』における悪虐、非道、非情の描写から、かつての清盛は成り上がりの暴君・傲慢な性格の持ち主だという評価が定着していました。
しかし実際の清盛の人物像は温厚で情け深いものだったとも言われている様です。
複雑な院政期の政界を生き抜く処世術を持っていたのは疑い様の無い事実です。
政治的には日宋貿易に見られるような財政基盤の開拓、宋銭を日本国内で流通させ通貨経済の基礎を築き、経が島築造に見られる公共事業の推進、時代の矛盾に行き詰まりつつあった貴族政治を打ち破り、(貴族的要素が強いとはいえ)日本初の武家政権を打ち立てるなど、優れた功績も残しています。
軍事的にも平治の乱で複数の部隊を連携させた戦術で藤原信頼軍を撃破し、御所や市街地の被害も最低限に抑えることに成功しており「洗練された戦法」を得意とする優秀な武将でもあったとされています。
このドラマでは、平家は常に一蓮托生であるのに対し、源氏は一族で殺し合い内ゲバ、ヒャッハー!な面を対比しています。
“善”のハズの源氏が身内同士で殺し合うというのは史実ですし、この哀しい性のせいか後の鎌倉幕府成立後も源家将軍は三代で終わり、実権は執権北条家に牛耳られていきます(ちなみに北条家の家系を遡ると平氏に行き着くのは歴史の面白いところ。俗に言う源平交代思想)。
この歴史の真実を知れば、源氏を単純に”善”と言う事は出来ませんし、その逆もしかり。
一蓮托生な平家の姿は、現代社会における理想的な家族像を表している様な気がしてなりません。
従来の源平観が大きく変わった事は、このドラマの功であると言えます。
平安から幕末明治へ
前述した通り、今年の大河ドラマ平清盛は非常に秀作でした。
平安から鎌倉へ、時代を変えるダイナミズムを感じる事が出来ました。
DVDがリリースした暁には、永久保存する事確実です。
iTunesでサントラもゲット!
さてさてまた来年から新しい大河ドラマが始まります。
幕末から明治にかけて活動した、会津の元祖ハンサムウーマン「新島八重」を主人公とした「八重の桜」です。
この作品は東日本大震災を受けて福島出身の人物を主人公にとの事で制作される様です。
個人的に幕末の動乱は大好きな時代の一つ。
結果的には敗けてしまう会津藩側からの視点でのドラマは、とても興味がそそります。
「どんなに駄作でも最後まで視聴して文句を言う」のが真の大河ドラマファンと思っていますので、来年もがっつり楽しませてもらいたいところです(その前に駄作で無い事を心底願います)。