【家具】ジャン・プルーヴェのアントニーが座り心地も見た目も気持ち良い

家具好きと自称するものの、このBlogで自分の所有する家具に関して詳しくご紹介していませんでした。
なんとなくの思いつきで愛用の家具をデザイナーとともに紹介してみます。
まずは自分の手持ちの中でも一番のお気に入り、ジャン・プルーヴェがデザインしたアントニーというイスです。





ジャン・プルーヴェとは

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ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé, 1901年4月8日 – 1984年3月23日)は、フランスの建築家、デザイナー。
建築生産の工業化に大きな役割を果たした。
オリジナルのヴィンテージ家具の中にはオークションで数千万の値段がつくものもざらにあり、世界中のセレブがこぞってコレクションしている。
海外ではブラッド ピッド、マーク ジェイコブス、国内ではNIGO、TETSUYA(L’Arc-en-Ciel)等がコレクションしていることでも有名。

Wikipediaより引用


プルーヴェはアール・ヌーヴォーの一大拠点であったナンシーの地で、特定の様式にとらわれることのない思想を培い、工芸の世界に合理的産業化の考え方を持ち込み、芸術と工業の融合をはかったナンシー派の影響を大きく受けました。
金属工芸家のもとに弟子入りし、その後パリの鉄工所などでも働き、1923年には自らの工房・スタジオをナンシーに構え、鉄製のランプやシャンデリア、階段の手摺などの製作・デザインを手掛けます。
その影響か、プルーヴェのデザインした家具は金属と木材がうまく融合しており、これ以上の無駄が無いというデザインと機能性を併せ持っています。

プルーヴェはナンシー市の市長や大学の教授も務め、建築家としても大きく活躍します。
彼の生み出したプレハブ住宅は政府にも採用され、戦時中1939年には陸軍のために800棟、1944年にはロレーヌ地方ヴォージュ県に避難民のための住宅約100棟を供給。
分解し、持ち運ぶことができる家具を多く残したプルーヴェにとっては、建築もその延長線上にあるものとして考えられており、こうしたプレハブ住宅が生まれました。

建築家の資格を持たないプルーヴェは、そのためか自らを建築家(architecte)ではなく建設家(constructeur)と呼んでいたそうです。
プルーヴェのものづくりに対する哲学を読みとることができる有名な話として、スケッチをする際に全体像からではなく、柱や梁のディテールから描き始めたという逸話があります。
また、アルミを建築材料として採用した先駆的な存在であり、家具製作から得た技術を応用した建築作品は、非常に「軽い」印象を生み出しています。
こうした先取的な技術を組み合わせたプルーヴェは、ハイテク建築とよばれる作品を多く世に送り出している現代の建築家たちにとって、師と仰がれる存在でもあります。


プルーヴェの代表作アントニー

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ジャン・プルーヴェのイスの中でも、最も優れたデザインと評され優雅なフォルムを持つのがAntony(アントニー)。
前後、左右、上下と360度どこから見た姿もとても美しいのがこのアントニーです。
アントニーの名前は、1954年にパリ近郊アントニー大学都市のキャンパスのためにデザインされたものから由来されています。
アントニーは成形合板(プライウッド)で緩やかなカーブで製造した座面を、L字型のスチールフレームに曲面をわずかに浮かせるようにデザインし、適度なクッション性を確保しています。
また、直線的でコンパスのようなスマートなデザインの脚部は、座面の成形合板の座面部分の安定を保つための最小限のデザインです。

はじめてこのイスを見たときは衝撃を受けました。
こんなに美しくて無駄のないイスがあるのかと。
俗に家具が好きな人がそのきっかけになるのは、有名なイームズのイスだったりします(僕もそうでした)。
ポップでオシャレなイームズのイスですが、なんとなくイームズにはモノとしてカスタムの余地があるようにも感じます。
まだ遊びがあるというか。
でもプルーヴェは足し引きできません。
アントニーだけではないんですが、プルーヴェのデザインしたモノはひとつの究極のカタチだと思います。


我が家のアントニー

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1950年代に製造されたオリジナルのアントニーは、ボルトひとつだけでも100万円オーバーとか気の触れるような代物です。
そんな買い物はセレブにしかできません。
我が家のアントニーはまだ独身時代に、当時アントニーの製造販売のライセンス契約をしていたVitra社製の現行正規品を購入しました。
現行品とはいえその当時でも8万円くらいしたと思います(その後為替の影響で10万円をオーバーしたときは心の中でほくそ笑みました)。
購入を検討しているときは散々迷いました。
たかがイス一脚におよそ10万円とか使っちゃっていいのか?
こんな王道、ベタど真ん中のイスでは遊びが足りなんじゃないか?
そもそも買って満足して果たして使うのか?
いつまでも悶々としているのも嫌なので、取り扱いのある東京のショップに足を運びました。
店頭ではじめてアントニーの現物を見た瞬間
「ああ、ダメだ」
と思っちゃった僕がいました。
とてもじゃないけど抗えない。
やっぱり王道、ベタってすごいですw
その場で購入してしまいました。

こうして我が家にやってきたアントニー。
こういう形状ですから正直座り心地は期待していなかったんですが、意外なほど馴染むのにはビックリしました。
プライウッドは硬いんですが、スチールフレームとの隙間がわずかに浮いているため、沈み込むようなクッション製があります。
座面にお気に入りのクッションを置いて座ればかなりくつろげるイスです。
鉄細工の職人としてキャリアをスタートさせたプルーヴェの”業”を背中に感じることができます。
またアントニーは、座っていないときでも目で楽しめるオブジェとしても秀逸です。
前述のように前後、左右、上下と360度どこから見ても本当に美しい。
一日中眺めていても飽きないんです。
僕はお酒を嗜みませんが、プルーヴェは酒の肴になります。
酒を呑みながら家具を見る(僕の場合酒がファンタに置き換わりますが)。
それだけの存在感がありますから、手に入れて良かった、その価値があったと心底感じています。

現在は子供達が家中を走り回っているため、ケガをさせないためにもリビングの隅っこに追いやられているアントニーですが、常に目に入るところに置いていますしその美しさは充分に楽しんでいます。
たまに座ると豊かな気持ちにしてもらえます。
子供達がアントニーに座ってガンガン飛び跳ねたりジュースをこぼしたりしたときは気を揉みましたが、物理的に壊れなければ傷やシミなども「アジ」として楽しめるようになってきました。
やっぱり家具は使ってナンボ。
早く良い感じにアメ色になってくれないかなあと経年変化を楽しんでいきたいです。
子供達が成長してリビングに居付かなくなったら、またリビングのど真ん中にアントニーを置こうと計画しています。

残念ながら2012年で生産終了となってしまったVitra社製アントニー。
ライセンス品は入手できなくなっちゃいましたが、現在ではいわゆる”リプロダクト品””ジェネリック品”として様々なメーカーが安価で販売していますので購入検討してみてはいかが?

※ジェネリック家具とは意匠権の切れたデザイン家具を、様々な家具メーカーが復刻版として生産した家具のことを言います。
安い素材を使ってもいいので、何百万円した本物のソファと全く見た目が同じのジェネリック家具であるソファを数十万で手に入れることが出来ます。

実物を見たい方、座ってみたい方いらっしゃったらぜひお気軽に我が家へ遊びに来てください。

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渋い(主にアントニーが)